第33章 決勝戦vs白鳥沢
『潔子ちゃん! 蛍君の付き添い私も行く。』
いつの間にか私の口から言葉がこぼれ出した。
明光さんもそのつもりで来たらしく、その旨を潔子ちゃんに伝える。
潔子ちゃんはこくりとうなづくと医務室に急いだ。
集中する蛍君は何も話さない。
ただこれからのことを考え『集中』している。
そんな蛍君に、私は何も声をかけることができない。
「テーピングでガチガチに固めてください。脱臼した小指は薬指に固定を…」
血は止まったみたいだけど明らかに痛そうな右手。
ここで泣いたら心配させる。
「そんな泣きそうな顔しないでください。」
顔を上げると蛍君が見ていた。
「大丈夫…先輩たちがなんとかしてくれてる。」
言葉にすると溢れてしまいそうな涙を必死で飲み込み首を縦に振った。
蛍君は自分の右手を見ながら言った。
「初めて思った
最後まで戦っていたいなんて…」
「できました。」
テーピングを巻き終え声がかけられる。
「夏乃さん、いくよ?」
蛍君に促され医務室を出る。
蛍君の右手はテーピングでガチガチに固められている。
「僕は大丈夫だから…試合、勝ってくるから上から見ててよ。」
情けない
逆に不安にさせてるじゃない
体育館の入り口がみえる。
『蛍君‼︎』
叫ぶように名前を呼ぶと私の方を向いた蛍君のユニフォームの胸倉を掴み口付けた。
人が見てることなんてどうでもよかった。
『負けたら許さないからっ‼︎』
叫ぶように言うと一筋涙が溢れる。
蛍君はふわりと微笑むと私に向かって言った。
いってきますって。