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年下のオトコノコ【HQ】

第33章 決勝戦vs白鳥沢


side月島

ウシワカのスパイクをブロックした時指に違和感を覚えた。

痛みと何かが流れ出る感覚。

自分の手を見ると自分の右手の小指の付け根から血液が滴り落ちていた。

「タイム!」

武田先生の声とともに烏養監督が走り寄ってくる。

くそ
こんな時に…

幸い小指

痛みさえ我慢すれば

血ってどれくらいで止まるんだ

テーピングでガチガチに固めれば

次のローテで日向が前衛だ

なんとかなるのか

「とりあえず医務室だ。」

「私いきます。」

「スコアは僕が。」

僕の周りで様々なことが決まっていく。

会場がざわついている。

清水先輩に渡されたタオルで血が滴るのを防いだ。
治療のため体育館を出ようとした時日向が見ていることに気づく。

「ちゃんと時間稼いでよ⁉︎」

僕にしては珍しく声をかける。

「お前が戻ってきた時にはもう全国行き決まってっから‼︎」





くそ

こんな時に

白鳥沢にリードされてる時に

早く医務室に行って戻らなきゃ

その思いからか自然と早足になる。
体育館から出ると見知った声に呼ばれる。

「兄ちゃんなんで居んだよ…って夏乃さんも…」

兄貴に支えられた夏乃さんの顔は真っ青で今にも倒れそうだ。

「弟の勇姿見に来たに決まってんだろ!その様子だと大丈夫そうだな…」


「まぁ、大丈夫そうでも肝心なとこで役立たずだけどね。」

ちがう
こんなことが言いたいんじゃない

「まぁ、でも5セットなんて疲れるし休めて丁度いいよ。手ぇ痛いけど。」


手の痛みなんて知るか
一刻も早く試合に戻りたい

天邪鬼な僕の口は思ってもいない言葉を紡ぐ。

軽口を言いながらも僕は医務室に急ぐため廊下を進む。


「『俺の仲間はほっといても勝つ!』
そんくらい信じとけばいいんだ。」


背中に投げかけられた言葉を僕はぐっと飲み込む。

いつもあまり喋らない清水先輩までもが今回は口を開いた。


「心配しないで。戻ってきたら負けてたなんて事絶対ないから…」

それでも僕はコートに早く戻りたい。
勝利のためにコートに立ちたい。

はやる気持ちを押さえながら廊下を進んでいたんだ。






『潔子ちゃん! 蛍君の付き添い私がいく!』

そう、声が聞こえるまで。


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