第32章 春高予選決勝前夜
作った料理を机に並べる。
蛍君のご飯はいつもよりやや少なめ。
2人で手を合わせてから食べる。
『たまご、だし巻きにしたけどお口に合うかな?』
自分の実家は甘めの卵焼きだったんだけど、居酒屋で食べた出し巻き卵が美味しすぎたから最近はもっぱら出し巻き卵を作ってる。
「うちも卵焼き甘いですけどだし巻きも美味しいですね。」
まぁだし巻きって言ってもたまごに顆粒だし入れて焼いただけの簡単だし巻きなんだけど。
ささっと食事を終わらせ、身支度を整える。
今日は少しだけ気合いを入れてメイクをする。
大会の時はパンツスーツなんだけど今日は特別、ウエストにリボンのついた膝丈のネイビーのフレアスカートに白の飾り気のないワイシャツ。明るめのグレーのカーディガンを合わせる。
全ておろしたてなのでいつも以上に気持ちが引き締まる。
髪の毛は後頭部で結び、シュシュでまとめた。
自分の準備が終わり、部屋を出ると蛍君はヘッドホンで音楽を聴いているようだったので、そっとソファの隣に座る。
私が座ったことに気がつきヘッドホンを外した蛍君。
『これ、お願いしてもいい?』
先ほどの身支度であえてつけなかったネックレスを取り出し蛍君に渡す。
蛍君に背中を向けて髪の毛を持ち上げると、蛍君は私の首元に手を回し、2つのネックレスをつけてくれた。
「今日の相手は強いです。
全国常連で…
バレーがうまいやつらばっかりで、
特にウシワカはU(アンダー)19にも選ばれるくらい強い。」
「全部のボールを叩き落とすなんて不可能です。
それでも何本かは止めてやろうって思ってます。」
そう、蛍君は言った。