第31章 代表決定戦2日目〜因縁の対決〜
不意に体を包まれる感覚がした。
目の前にはライトグリーン。
洗剤と汗と制汗剤の香り。
「ごめん…今だけ…」
空いた手を背中に回しぽんぽんと背中を叩くと抱きしめる力も強くなる。
時折鼻をすするスンッという音がする。
遠くでざわざわと人が騒ぐ音がする。
人のざわめきが近づいてきたような気がした。
及川君は体を離し、Tシャツで顔を拭いた。
「夏乃さんって…」
『ん?』
「いや、なんでもない…」
Tシャツから顔を離した及川君はもういつもの笑顔に戻っていた。
「ねえ夏乃さん?今日の及川さん格好良かった?」
『うん!格好良かったよ?』
「惚れちゃうくらい?」
『うん!惚れちゃ…って…及川君?』
危ない危ない…
のせられるとこだった
及川君は残念って笑ってる。
「やっぱり夏乃さんの連絡先欲しいな?」
『教えるくらいなら別にいいけど…送られてもあまり返せないかもよ?』
私はスマホを出すとメッセージアプリを起動させる。
すると、一瞬でスマホを奪われ私のスマホは及川君の手の中に。
『ちょっと!及川君!返して!』
必死になって取り返そうとするが高く掲げられるように持たれてしまうと身長差があって届かない。
「徹君って呼んでくれたら返すよー。ふんふんふふーん♪…ってちょっ!夏乃さん⁉︎」
もしかして…
「夏乃さん彼氏…いる?
それもものすごく年下でメガネでのっぽ」
やっぱり…
『ちなみにどこでわかった?』
及川君は私のスマホの画面を指差す。
そこには私のメッセージアプリのアドレスであるfireflyの文字が。
「だってfireflyって蛍って意味じゃない?」
『…よく知ってるね…?』
「及川さん、知らないものないから☆
それにしても…烏野ののっぽ君ねー…」
及川君は私の後ろを見るとなぜか楽しそうに笑い、私の腰を抱く。
そして端正な顔が不意に近づいた。