第30章 代表決定戦2日目
コートチェンジのため移動中、澤村君を医務室に送り届けてきた繋心センパイが帰ってきた。
その顔はどこからどう見ても怒っている。
もしかして…
山口君の最後のサーブ…見てた?
「やぁまぁぐぅちぃぃぃい‼︎‼︎」
やめて…
怒らないで…
繋心センパイが山口君に近づく。
身をすくめた山口君。
その前には縁下君がが割って入った。
「わかってます。
多分、自分で1番わかってます。」
その声で泣きそうになる山口。
本人は自覚している。
最後に打ったのは攻めるサーブじゃなく守りのサーブ。
悪く言えば…
逃げのサーブ。
「なに?なんか問題あった?」
冴子ちゃんが不思議そうに島田センパイを見る。
島田センパイはふうと息を吐き、説明を始めた。
「ジャンプしなくても取りづらい無回転は打てる。
でもジャンプしてより高い打点から打つほうがボールの勢いも増すし威力もあがる。」
「へぇ…」
「守りに入ることが一概に悪いことではないと思う。
結果今は烏野の得点になったし。
でもいまの忠にとって他の連中と同じように戦うための武器は唯一『サーブ』
それから逃げたらなにも残らない…」
自分には何もない。
少しでも試合にでてるみんなに近づきたいって必死にサーブを練習してきた山口君。
それを認めてもらったからこそ今回ピンチサーバーとして試合に出た。
ピンチをチャンスに変えることができなかったら
コートにはいられない。
歯を食いしばり立ちすくむ山口君に蛍君がタオルを渡した。
タオルを渡した蛍君も
受け取った山口君も
なにも言わなかった。
繋心センパイの周りに集まったみんなの様子から澤村君は大丈夫そうだと見受けられた。
責任を感じているのか田中君は歯を食い縛っているが両隣りにいた東峰くん縁下君に背中を叩かれている。
たとえ脳震盪の可能性は消えてもきっと痛みはひどいはず。ここにいないってことは次のセットも澤村君抜きでの試合になる。
きっと厳しい戦いになる。