第30章 代表決定戦2日目
縁下君がチームに馴染みつつある中ふとベンチを見ると潔子ちゃんがベンチメンバーに手招きをしていた。
誰だろう…
待機スペースから先生たちの座るベンチに向かったのは…
そう、山口君。
全身ガッチガチに緊張している。
動きがぎこちない。
山口君はローテーションでサーブが回ってきた蛍君と交代みたい。
入れ替わりの時に蛍くんがなにか言ってる。
蛍君がベンチに戻る後ろ姿をキラキラした目で見つめる。
その顔はいつもみたいに「ツッキー!」って蛍君を呼んでいるようだった。
もしかして実際呼んでた?
蛍君が声を掛けてから少し緊張が解けたみたいだ。
むしろ隣の嶋田センパイの方がものすごく緊張してる。
吐きそう…とか言ってるけど大丈夫かな…
山口君は他の1年生と自分を比較し、自分には特出する技術がないって嘆いていたのを知ってる。
そんな山口君がここ数ヶ月、嶋田センパイのところに通い必死で身につけた技術。
それがジャンプフローターサーブ 。
審判の笛の音がなる。
緊張でボールがうまく上がってない。
焦った顔のジャンプサーブ。
ネットに引っかかり相手コートに入る。
ネットインで烏野の得点になる。
隣で嶋田センパイが緊張しすぎて脱力してる。
山口君も嶋田センパイも2人とも緊張しすぎだから…
あと1点。
後1点で1セット取れる。
蛍くんがボールを持った山口君を見て何かに気付く。
次のサーブ、山口君はジャンプフローターを打たなかった。
「今度はジャンプして打つんじゃないんだ。」
山口君のサーブは返され、相手の攻撃で山口君側にボールが飛ぶ。
山口君取って!
しかし、山口君の足は動かず落ちそうになったボールを隣にいた縁下君が取る。
うまく上がったボールを東峰君が撃ち抜く。
今の得点で1セット目は烏野が取った。
観客席のみんなはふうと息を吐き胸をなでおろした。