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年下のオトコノコ【HQ】

第23章 怒涛の東京出張‼︎1日目夜編


side月島


夏乃さんがバスルームに消えると、一ノ宮さんはさっきまでのおちゃらけた雰囲気からガラリと変えて僕の前の椅子に座った。

「月島君。椎名先輩、3月に異動の話が出て東京から宮城に戻ったのは知ってるよね?」

その話は本人から聞いているので、僕は頷いた。

「本当は他の人が行くはずだったの。」

ぽつりぽつりと一ノ宮さんが呟くように教えてくれた。

「確か2月中旬くらいかな?急に先輩、いつも以上に仕事に打ち込み始めたの。
生活を犠牲にするっていうのかな?
休みもとらず、家にも帰らず。
周りが心配して声かけても知らんぷりで…
これ以上無理に仕事をしたら過労で倒れちゃうんじゃないかって…」

シンとした室内に夏乃さんが浴びているシャワーの音だけが響いている。

「先輩ともっと仕事したかった。
あの人の元で働きたかった。
でもこのまじゃあ先輩が壊れてしまう。
だから私、編集長にお願いをしたんです。
先輩、頑固だから私のお願いは聞いてくれないだろうから。」

撮影の時やさっき夏乃さんと話をしていた時には絶対に見せなかった苦しそうな、悲しそうな顔。

「それからすぐに先輩に異動の辞令が出ました。
これで大丈夫だったんだろうかって、私ずっと考えてました。」

うつむきながら話をしていた一ノ宮さんが頭を上げる。


「今日、久々に先輩の楽しそうな顔見ました。」

一ノ宮さんが僕の方を向いた。

「先輩のこと、よろしくね?きっとあなたなら大丈夫。」

カチャン

シャワーが終わったのかタオルで髪の毛を拭きながら出てくる。

『お風呂終わったよー?話は終わった?』

「終わりましたよ?しっかりと振られました。モデルの件。」

本人には聞かれたくないのか別の話をしている一ノ宮さん。

『あー…スカウトの話ね?』

「今日のデータ見たらわかると思いますが、月島君なかなかですよ?」

『撮影の時も思ったけどやっぱりすごい?じゃあデータ確認しなきゃ。』

「じゃあ私はこの辺で失礼しますね?次こっち来たときはご飯行きましょうね?」



そう言って帰ろうとする一ノ宮さんを、僕は呼び止めた。


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