第22章 怒涛の東京出張‼︎1日目
蛍君は、震えてた。
『大丈夫…大丈夫。』
落ち着かせるようにそっとふわふわの髪の毛を撫でていると落ち着いてきたのか震えが止まる。
長い息を吐いて私から離れた。
『ねえ、蛍くん。ちょっと待ってて?』
震えが止まったからって緊張していないわけじゃない。
ふと思いついたことを実行に移すためにスタッフ、カメラマンさんに耳打ちをする。
OKをもらうとわたしはいそいで控え室に走った。
『蛍君これ!』
持ってきたのは蛍君のヘッドホン。
『音楽聴きながらだったら少しは気がまぎれるかなって。ヘッドホン使ってOKだって。』
一瞬ぽかんとなった蛍君は、口元を抑え、笑いを押し殺すようにククッと笑う。
そして私からヘッドホンを受け取るといつもみたいに首にかけた。
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね?」
そう言い、進み始めたが2、3歩進んだところで止まり私の方を向いた。
「僕のこと…ちゃんと見ててくださいね?」
そう言い、蛍君はカメラマンさんの前に向かった。
「お願いします。」
一言言うとヘッドホンを耳にかける。
そしてi p○dを操作し、ポケットにしまう。
一度目を瞑り、深く息を吐く。
そのあとは見事というか、なんなのか。
カメラマンが喜ぶ被写体とでもいうのか、動き一つひとつがさまになっている。
そんな蛍くんをじっと見入っていると不意にトントンと肩を叩かれる。
横を見るといつの間にか一ノ宮がいた。
「先輩?ちょっとお願いしたいことが…撮影中に申し訳ないんですが来ていただいてもよろしいですか?」
『いいわよ?何?』
私は言われるがままについて行った。
ここでついて行ったのが間違いだった…
後からものすごく後悔することが待ち受けているなんて今の私は思ってもいなかった。