第22章 怒涛の東京出張‼︎1日目
『お久しぶりです。編集長。』
そう言いながら私は買ってきたお菓子を差し出す。
「久しぶりだね。君の活躍は聞いてるよ?今日はわざわざ呼んでしまって申し訳なかったね?」
『こちらこそ見学の学生急に増やしてしまってすいません。本日学生5名になります。1人ずつ挨拶!』
1人ひとり挨拶を済ませ、私が行う仕事を聞こうとしたその時だった。
エレベーターが開くと同時に転がるように走ってきた人。
「へぇんしゅぅぅぅちょぉぉぉ!!!」
その女性は編集長の前でブレーキをかけるように止まった。
パンプスでよくそんな芸当ができるな…
「ピンチです!今日私服撮影のはずだった新人モデルさんたち、全員食中毒で、アウトですー!他の現場のお弁当に当たったみたいですー!」
がたん。
編集長が立ち上がり走ってきた女性に話しかける。
「本当⁉︎他のモデル当たってみた?」
「モデル事務所連絡してるんですけど急すぎて対応できる子達がいないみたいで。どうしよーーー!」
パニックになっている女性。
私はその女性…もとい後輩に声をかけた。
『ねえ、一ノ宮?』
「幻覚?椎名先輩の声がきこえるー!自分テンパりすぎて幻聴聞こえてる?」
『一ノ宮?私いる。あなたの目の前にいる。』
目の前のテンパっている子もとい、後輩である一ノ宮 ほの鹿(いちのみや ほのか)は私の存在を確認すると、ぱああっと笑顔になった。
「せんぱぁい!お久しぶりです!いらっしゃるの本日でしたっけ?」
『感動の再会とかしてる場合?モデルは何人必要なの?』
「はい!今回予定していたモデルは5人、まぁ最悪4人でもいけます。ちなみに今回のテーマは『イケメンの私服特集』です。」
昔、仕事をしていた時のように話し始める。
それをぽかーんとした顔で見ているお仕事見学組。
ぽつり、鉄朗が声を発した。
「なぁ、夏乃さん…俺たち全然ついていけないんだけど…」
『あっ!ごめん。ついつい…』
このタイミングではじめて周りに人がいるのに気付いたらしい一ノ宮は、ぐるぐると回りを見渡す。
「先輩?なんですかこのイケメンたち…」
『仕事の見学しに来た私の知り合いの学生だけど…ねえ、あんたもしかして…』
一ノ宮はみんなに向き合うとにこりと微笑み言った。
「ねえみんなモデルのバイト…してみない?」