第19章 最後のワガママ
不意に蛍君が話し出した。
「そうだ、今日久しぶりに兄と話をしました。」
『お兄さんなんて?』
「バレーの話をしました。今でもバレーの試合に出てるみたいで。」
『社会人チーム?』
社会人チームかぁ、どこのチームなんだろう。
「そうみたいです。高校の時試合にも出れてなかったのに…」
そう言い少し落ち込んだ顔を見せる蛍君に私は…
『きっと…忘れられないんだよ。
試合でスパイクを決めた時の歓声とか
自分で点を取ったときの気持ちよさとか
私にはわからないけどきっとバレーを続けたいと思う何かがあったんだよ。』
ニコッと微笑むと、蛍君はびっくりしたような顔をしてこっちを向いた。
「兄もそう言っていました。
それと、気がすむまで本気でやれる場所にいたいって…」
『そっか…』
きっと悔しかったんだろうな。
一度歓声に包まれたらどうして自分があそこにいないんだろうってきっと思ってしまうだろう。
だからまだ続けたい。
そう思ってるんじゃないかな?
でも、蛍君はまだまだコートに立てる。
お兄さんの夢見た烏野のユニフォームを着てコートに立てる。
夢は繋がってる。