第13章 夏の長期合宿2日目‼︎
長く、長く息を吐いた後、蛍君は話をしてくれた。
「僕、兄がいるって言いましたよね?
兄は中学ではバレー部のエースでした。
兄の中学の試合を見に行ったりしましたが兄はいつもチームの中心にいて、どんどん点を取っていました。
その後兄は迷わず、当時白鳥沢に匹敵するバレーの強豪と言われていた烏野に進学しました。
僕は学校から帰宅した兄と毎日バレーの話をしました。
兄も部活であったことをたくさん話してくれました。
試合でスパイクを決めた、ここを褒められた怒られた。
今日は調子が悪かった、調子が良くていつもできなかったことができた。
そんなことを毎日話したんです。
きっと無意識に期待を寄せていたんでしょう兄に。」
淡々と話していた蛍君の顔が歪んだ。
「兄貴の高3の最後の試合を見に行きました。
試合を見られるのは恥ずかしいから試合には来ないでくれ。
兄はそう言っていましたが、僕はそれを破って試合を見に行ったんです。
兄はコートで活躍している。
そう思っていたんです。
でも違った。
コートのどこにも兄貴はいなかった。
選手にも控えの中にも。
衝撃的だったんです。
今までコートの中にいると信じていた兄貴が実は控えにも入れてもらえてなかった。」
私は言葉が出なかった。
口を挟めなかった。