第13章 夏の長期合宿2日目‼︎
試合に勝ちたいとか、就職に有利とか。
きっとそうじゃない。
バレーがないと世の中退屈でしょうがないとでも言うような自信。
純粋にバレーが好きで、バレーのことしか考えてないからこそ、こんな言葉が出るのだろう。
木兎君らしい。
蛍君はこうなってくれるかな。
バレーは「たかが部活」じゃなくて面白いものだって思えるようになるかな。
そんなことを考えていると、先ほどの言葉に惚けていた蛍君の眼前で木兎君が手を叩く。
「ハイ!質問答えたからブロック飛んでね‼︎」
「ハイハイ急いで‼︎」
その声に私は当初の目的を思い出し、ひょっこり体育館に顔を出した。
『 すみませーん…』
みんなが入り口を見る。
『昨日はどーもー…』
まあ、ちょっと気まずいよね…?
「椎名さん昨日はごめんな?」
黒尾くんは素直に謝る。
「椎名さん可愛かったぜー!」
いや、木兎くん…そこは先に謝罪じゃないのか…
「木兎さん馬鹿なんですか。ここは謝るタイミングでしょう。」
「そうだなあかーし。昨日はごめんなー!」
そして先輩をしっかり謝らせる赤葦くん…流石…
『いや、それはいいんだけど…』
すると木兎君の顔がぱああと明るくなる。
「許してくれんの!やりぃ!」
「そこ喜んでいいとこ?」
「ダメだ、キリがない…で、どうしました?椎名さん。」
やっと私に話が回ってきた。
このメンバーと話してると自分がどこで話をしていいのかわからなくなる…
『蛍君連れて行ってもいい?今日体調悪いみたいなの』
蛍君は至極びっくりしたような顔をしている。
すると木兎君、黒尾君がニヤニヤしながらどーぞどーぞ!と蛍君の背中を押す。
「僕はべつに…!」
逃げようと抵抗する蛍君を捕まえると「にこー」っと微笑み、ある言葉を私は蛍君に投げかけた。