第13章 夏の長期合宿2日目‼︎
黒尾君とひとしきりワイワイやっていた木兎君が急に蛍君に声をかける。
「あー!眼鏡君さ!」
「月島です」
やっぱり眼鏡君は嫌なのね…
「月島君さ!バレーボール楽しい?」
蛍君は首を傾げながらちょっと悩み、「いや…特には…」と答えてる。
「それはさ、下手くそだからじゃない?」
あ、蛍君ショック受けてる。
そんなことは御構い無しと言わんばかりに木兎君は話を続ける。
「俺は3年で全国にも行ってるしお前よりうまい断然うまい!」
「言われなくてもわかってます」
まあ、全国5本に入るスパイカーだもんなーなんて思っていると…
「でもバレーが楽しいと思うようになったのは最近だ」
という。
訳が分からないような顔をしている蛍君をよそに木兎君は話を続けた。
「ストレート打ちが試合で使い物になるようになってから。
元々得意だったクロス打ちをブロックにガンガンとめられてクソ悔しくてストレート練習しまくった。
んで、次の大会で同じブロック相手に全く触らせずストレート打ち抜いたった。
その一本で「俺の時代キタ!」くらいの気分だったね‼︎」
この時のことが本当に嬉しかったのだろう。
興奮がこちらまで伝わってくる。
すると一瞬で木兎君の空気が変わり木兎君の視線が蛍君を射抜いた。
「『その瞬間』が有るか無いかだ!」
ぎらり、木兎くんの瞳が鈍く輝く。
「将来がどうとか次の試合で勝てるとか一ひとまずどーでもいい‼︎
目の前の奴ぶっ潰すことと自分の力が120%発揮された時の快感が全て‼︎‼︎」
本当にバレーが好きでバレーのことしか考えてない。
きっと木兎君はいい意味でのバレー馬鹿なんだろう。
先ほどまでの射るような視線はなくなり木兎君はいつものような話し方となる。
「まぁそれはあくまで俺の話だし誰にだってそれが当てはまるワケじゃねぇだろうよ?
お前の言うたかが部活ってのも俺はわかんねえけど間違ってはないと思う。」
「ただ」
木兎君が蛍君をみて挑発するように笑う。
「もしも『その瞬間』が来たら」
蛍君に向かって指を指す。
「それがお前がバレーにハマる瞬間だ!」