第2章 ボクと如来
顔見知りが増えたこの館でも、微笑みながらボクを汚らわしいとののしる奴は五万といる。
そう考えると、いつも気だるげでやる気の一切が見えないこの男は思いのほか良い保護者だったのかも……と思い始めた今日この頃。
如来は静かにボクを手招きする。
何が、あったのかは知らないが、この男が重い重い腰を上げるほどだ。
何か、重大なことがあったに違いない。
少し急ぎ気味に如来のもとへ行くと、如来はポンッと軽くボクの頭に手を乗せいう。
如来「この書類を届けるついでに、お前の世界を広げてこい」
開いた口が塞がらないというのは、こういうことを言うのだろうか……?
如来が仕事をしている……だと……?
いや、問題はそこではなかった。
ボクの世界を広げる?
如来の言うことは、いつも難解だが、今日のはいつも以上に難しい。
まだ、簡単な読み書きしかできないボクに、頭を使うことを要求しないでほしいものだ。
蘇芳「世界を広げるとは……?」
ボクが首を傾げれば、如来はとにかく行って来いという風に、ボクに書類と地図を渡し、玄関まで送りに来る。