第2章 ボクと如来
「蘇芳」
ボクは呼ばれた自分の名前に静かに振り向く。
そこには気だるげに立つ釈迦如来の姿があった。
ボクがこの男に拾われてから、随分の歳月がたち、如来の館の中だけなら不自由のないくらい知り合いが増えた。
蘇芳は如来がボクにつけた名前だ。
蘇芳色の髪に金晴眼をしたボクは、天に固まった雲の中から生まれたらしい。
如来は言った。
ボクを育てるのは、後に来る災厄のためなのだと。
釈迦如来は、本来この世に起こる事柄に一切関与することができない存在だから、ボクを使うのだと。
黄金の目を持つ赤子は吉凶の源……。
古来よりそういわれている、金晴眼を持つボクは、あまり良い存在ではないらしい。