第3章 ボクと捲簾
ボクの言葉に男は目を丸くすると一つうなずく。
「そうかお前が釈迦如来が気まぐれに拾ったっつーガキなわけだ。へー……名前は? おれの名前は捲簾っつーんだ」
蘇芳「……蘇芳」
捲簾と名乗った男は小さく笑う。
蘇芳と名乗ったボクの頭をぐりぐりとなでながら。
捲簾という名を聞いたことがないわけではない。
そんな大した功績を上げているわけではないが、自由気ままで自分のやりたいことをやる。
女には人気があるが、男や上司にはいうことを聞かないとすこぶる評判の悪い男だ。
最近また、部署移動になって会える機会が減ったのだと如来のところにいた女官が言っていた。
確か、今は移動先で大将とかいう偉い地位にいるとか……。
捲簾「で? お前はこんなところで何してんの?」
捲簾は未だにやついた顔で聞いてくる。
蘇芳「如来のお使いだ。えと……この書類を……観世音菩薩のところへ持っていくんだ」