第3章 ボクと捲簾
如来から渡された地図に沿ってついた場所には大きな館があった。
いや、館というより城といった方がいいかもしれない。
たくさんの桜が咲き誇る、楽園。
如来の館の中しか知らなかったボクは、しばし、桜に見とれてしまった。
蘇芳「話には聞いていたが、桜とはこんなにもきれいなものだったのか……」
ぽつりとつぶやくと木の上からクスクスと笑う声が聞こえた。
顔を上げて目を凝らすと、男が一人こちらを見下ろしていた。
男は、酒瓶を片手ににやにやとしつつ口を開く。
「珍しくガキがいると思ったら、なんだお前、桜見たことなかったのか?」
蘇芳「当たり前だ。今まで、如来の館から出たことがなかったんだから」
言い返す僕に何か興味をひかれたのか、男はスタッと木の上から飛び降りてきて、ボクの前に立つ。
男はボクに目線を合わせるようにしゃがむと、じーっとボクを見つめる。
「如来ってーと、釈迦如来のことか?」
蘇芳「それ以外の如来にボクはあったことがないな」