第8章 お正月 <双子6歳>
年の瀬。
いつもなら正月の準備やらなんやらで忙しいが今年はこの旅行の為に前倒しするものは前倒ししたし、やらないこともあるせいか、すごくのんびりとした時間を過ごす3人。
「こんなにのんびりとした時間を過ごすの久し振りだねぇ」
しみじみと雅紀が言えば潤も頷く。
「ホントだよね?
智も和も今年は体調を崩すこともないし、こんなに穏やかな年末ってもしかしてはじめて?」
「かもしれないね…。もう6年?
小さいあいつらを連れて帰ってきてから…。
早いなぁ」
翔が呟くように言う。
「ホントだよなぁ。めっちゃ小さかったもんな。
泣き声も小さくて…、でも抱いた時のあったかさとか重みとか…。
まんま、責任の重さって感じがしたもん」
潤が子ども達が寝ている方に目を向けながら振り返るように呟く。
双子の両親が突然の事故で他界して…そのままだと施設に預けることになるっていうのを知ったとき、翔は後先考えずに二人を引き取ることにした。
でも時々考える。
果たしてその判断は…正しかったのかと。
智と和也のことを考えれば引き取ったことは間違っていないと思う。
でも雅紀と潤のことを考えると…。
「あのさ…俺はまぁその勢いもあったけど、智美の兄だし、智と和也の親になれて良かったと思ってるけどさ…。
二人とも…後悔してない?
それこそさ、俺が巻き込んでなければ…もっと自分のやりたいことで出来たり…それこそ結婚とかさ…」
翔が手元のグラスを見つめながらひとりごとのように聞いた。