第8章 お正月 <双子6歳>
交通博物館のチケット売り場でチケットを買うとスタンプラリー用のパンフレットを渡される。
スタンプラリーをしながら館内を廻ると効率よく廻れるらしい。
「うわ、ここって入場料いるんだぁ」
斗真がちょっと不満げな顔で言う。
「え?だって博物館なら入館料なんて当たり前じゃないの?」
翔はなにが不満なのか判らずに言う。
「日本ならそれは当たり前かもしれないけどさ、ロンドンだとイレギュラーなんだよ?
ほら、サクショーだって、大英博物館、無料なの知ってるだろう?
あれがイギリスの当たり前だから」
斗真に言われて翔はなるほどって顔で頷いた。
「パパぁ早く〜」
智が翔を呼ぶ。
智と手をつないだ和也が空いている手で前方を指差し話しかける。
「ねぇ、とーま、あれ1番?」
そんな和也に斗真が頷きながら言う。
「そうだよ、ほら、ここにスタンプを押すの」
パンフレットを開き、スタンプを押す場所を指し示す。
その場所を指で押えた和也が笑いながら言う。
「ねー早く行こう?」
「和、行こう、並んでーしないと」
智が和也を急かす。
二人とも今にも走り出しそうな勢いで居るのが大人たちには不思議だった。
でも過去になんどかその様子を見ている翔は若干の諦めを含んだ顔で斗真を見た。