第7章 おべんとうばこのうた <双子6歳>
隆果の想いに和也がどう応えるかはわからない。
小学校になれば、学区が違う。
今度の春は想像以上にいろいろな想いを運んでくるのかもしれないと翔は密かに思った。
人の想いに正解はなくて…故に交差する。
時には絡まり、解けなくなり、凝りになることもある。
それでも…いや、そうやって人は成長するんだと子どもたちを見て思う翔。
はじめて二人を自分の腕に抱いてから6年。
あの時、無謀と思えた選択は翔に沢山のものを運んできた。
それに今は素直に感謝している翔。
目の前のアスレチックで遊ぶ子どもたちを眩しそうに見つめていた。
「パバ~!」
「翔ちゃーん!」
翔を呼ぶ子どもたちの声。
その声に導かれるように二人のもとに行く。
小さな手を握り、その暖かさを感じた翔はひとつ息を吸うと子どもたちと遊び始める。
そこにあるのは人気のイケメンアナウンサーの顔ではなく、一人の父親である櫻井翔だった。
子どもたちの笑顔と笑い声に包まれた秋の日。
沢山の思い出と様々な感情を心に詰め込んだ5人。
智も和也も、翔も雅紀も潤も幸せな気持ちで帰路についた。
<おべんとうばこのうた <了>>