第5章 Fantastic Version <双子2歳>
翔の様子は中継が繋がれる前から横山の手元のモニターに映っている。
翔の姿が塔の陰になって見えなくなったため、双子たちはモニターにかぶり付いている。
あまり近寄ると横山たちの邪魔になるので雅紀が和也を、潤が智を抱き上げる。
スタッフ用のポイントで子どもを抱上げれば否応なしに目立つ。
が、2度目の中継の後に翔が双子と話している様子を見ていた周りのゲストたちは察したのか取り立てて騒ぐことは無かった。
正直、助かったとここにいる関係者はみな胸を撫で下ろした。
そんなことを知るよしもない双子たち。
ニコニコしながら時々掛かる水しぶきにもめげずに目の前を行くフロートに手を振る。
「どぉな~、あか~」
いつもと違う赤い衣装のドナルドダックに手を叩く智。
「あ~ちっぷ~」
大好きなリスを発見して手を振る和也。
「さと~、ちっでいるよ~」
「あ~、かじゅ、でーるいゆ!」
大興奮で体を揺する双子。
抑える雅紀と潤は必死だ。
目の前をフロートが通り過ぎると再びモニターに目が行く。
「ぱぱ、びちょびちょ…」
智が悲しそうに呟く。
「ぱぱ、だいじょうぶ?」
和也が心配げに言う。
そんな二人の優しさに大人たちの顔に笑みが零れる。