第18章 ・【外伝】大王様とウシワカイモウト
「ご指摘のとおりです。」
しばらく及川を見つめてから文緒は言った。
「私の望みはずっと兄様のお側にいる事です。からかわれるのはともかく確かに今の所兄様のお側にいられなくなる心配もないし、恐らく兄様のおかげで以前のように何かされる心配もないのでしょうから。」
素直に認める所が文緒ちゃんらしいと及川は思う。
「ねぇ文緒ちゃん、教えて。」
やがて及川は言った。
「結局の所、今ウシワカちゃんとはどうなってんのかな。」
文緒は微笑んで答えを口にした。及川はやっぱりと呟いた。
「察してたけど改めて聞くとびっくり。」
「私もです。当初兄様が私に関心がなかった事を考えると。」
「だろうね。」
そこへ徹ーと声がする。
「あ、いけない、甥っ子の相手してたんだ。」
「あら何てこと。お邪魔になってしまいましたね、申し訳ありません。」
「いいよ、こっちこそまた話せて面白かったから。そっかぁ、それにしてもウシワカちゃんがねぇ。俺のアドバイスのおかげだねっ。」
「何の事でしょう。」
「ああ、気にしないで。」
以前文緒の知らない所でウシワカと話をして文緒はその義兄しか見ていない事を言ってやった件をいちいち話す必要はないと及川は思う。(※詳細は第一部 第27章を参照のこと)
文緒は不思議そうに首を傾げるがそれ以上は突っ込んでこなかった。
「それでは失礼します。」
「うん、気をつけてね。バイバイ。」
ウシワカ妹はお辞儀をしてパタパタと去っていく。その後姿を及川はしばし見送る。
「意地悪しちゃってごめんね。」
本人に言えばいいものを及川はひとりごちる。
「でも、可愛いから意地悪したいってあるよね。」
言っていると背中をベシッと叩(はた)かれた。
「痛いっ。」
「徹っ、いー加減にしろよなっ。」
「ごめん猛っ。」