第2章 ・運命
学食にて天童が話を振ってきたのは突然である。
「ねーねー若利君。」
「何だ。」
「若利君てさ、文緒ちゃんが最初にきた時どんなだったの。」
聞こえていた瀬見が天童お前なあと呟いているが当の天童はスルー、若利も気にしていない。
「どんな、とは。」
そのまま話を進めた。
「例えば可愛いと思ったとか何か苦手かもって思ったとか。」
「お前それ聞くだけ無駄じゃね。」
瀬見が言うのも無理はない、文緒が白鳥沢学園に編入してきた当初自分も含め男子バレー部のチームメイトは若利の義妹への無関心に手を焼いたからである。しかし若利は瀬見に言われた意味がわかっておらず首を傾げてからそうだなと呟いた。
「特に感じる事はなかった。」
ほれやっぱりと瀬見が言い、天童はつまんねと呟く。
「ただ、」
若利は続けた。もちろん何も考えていない。
「普通ではない気はした。」
「お前に言われるとか何事だよ。」
瀬見が言った所で1年の五色がわかりますっと声を上げる。
「文緒はおとなしいけど何か違いますよね。」
「全然要領を得ないな。」
「いや五色の言う通りだ、」
じとっとした目で後輩に言う2年の白布に若利は言った。何となく若利と五色は通じるものがあるのかもしれない。
「今思えばの話だが。」
言う若利の頭には初めて文緒に引き合わされた時の事が浮かんでいた。
会った事もない遠い遠い親戚の夫妻が亡くなった。遺された娘を牛島の家で引き取る事にした。話は母と祖母から聞いていて若利は反対しなかった。反対する理由がなかったのだ。嫌だとも嬉しいとも思わない、保護者のいなくなった子供を放置する訳にも行かないだろうし家に住まわせるだけの空間はあったし。
「素行さえ悪くなければ問題ない。」
念の為それだけ言った。世間様をいたずらに騒がせるような者は流石に困る。もっともそんな奴を母と祖母が受け入れるとも思えなかったが。
実際母は心配ないと断言した。大人しい女の子だと言う。
「そうか。」
若利は呟く。
「ならいい。」
どんな外見の娘だとも聞かなかった。そのまま日が経ってその娘と引き合わされる事になった。