第14章 ・おでかけします 終
別にそんなに考える事などないのだが若利は真面目に考えていた。とにもかくにも今日の義妹は色々珍しい。
博物館では若干興奮して浮き足立っていたし食事の時は話に夢中で口を拭うのを忘れ今本屋ではあれやこれやと目移りするわ若利が尋ねたという状況を抜いても何だか語るわと来ている。よくわからないがどうやら自分が思うよりも義妹は楽しんでいるらしい。それならば、
「兄様。」
不思議そうに呼ぶ文緒の声に若利はハッとした。
「いや何でもない。」
「そうですか。お疲れでないと良いのですが。」
「お前が気にする必要はない。」
「わかりました。では私はお会計を済ませてきます。」
「そうか。」
「あの、兄様。」
「何だ。」
「レジはもうすぐそこです。」
「そうか。」
本気でついていきかけた若利は言われてやっと気がついた。
文緒が会計を済ましてからついでに2人はスポーツ雑誌のコーナーにいた。
「月バリですか、兄様。」
「ああ。今月はまだ買っていなかった。」
若利は呟いて棚から一冊手に取る。
「何だか不思議です。」
「急にどうした。」
「自分がこういう専門誌に取り上げられるような人の横にいる事が。」
「そうか。」
他にいう事が思いつかない若利はそれだけ言って終わらせた。
その後2人は本屋を出てまたノシノシポテポテと外を歩いていた。
しばらく歩いた頃見えてきたのは大きな公園である。
「二人連れが妙に多いな。」
「あの辺りの景色が綺麗です、兄様。写真撮ってる方もいます。」
「ああ。」
「及川さんが仰ってたのはこの事でしょうか。」
「そのようだが素直に感謝するのはどうにも癪(しゃく)に触る。」
「バレーの腕は認めてらっしゃるのに随分ですね。」
「話が別だ。勝手にお前に触れていいわけではない。」
「兄様、いつかチームの皆さんから了見が狭いと言われても知りませんよ。」