第13章 ・おでかけします その7
そういう訳で気づけば2人は適当な店で食事にしようとしていた。
「不思議な気分だ。」
注文したものを待っている間若利が呟く。
「不思議とは。」
小首を傾げて文緒が尋ねると若利はチラリと店内を見回した。
「お前と外出してこういう場所にいるのが。チームの皆とは多少あるのだがな。」
「兄様はお忙しいし私はあまり外に出ないタチですからね。」
「その割には学校帰りにウロウロしているようだが。」
「そんな、限られています。」
「外に出るのは構わんが自分から烏野に行ったり条善寺と事を構えるのはやめてもらおう。」
どうやら拾ってもらったガラケー用ストラップの礼を言いたいと烏野へ日向と影山を訪ねた—結果チームの他の連中にもいじられた—事、烏野のマネージャー清水が条善寺の照島らに絡まれていた所へ1人割って入った事が相当問題だったようだ。
前者はともかく後者は確かに相手が悪ければ大変危険な話である。わかっていた文緒はしょぼんと俯き一方若利は珍しくふぅと息を吐く。
「比較的正義感が強いのは知っている。勿論平気で不義理をするお前であってほしくもない。」
ハッと文緒は顔を上げた。
「だが何度も言うようにお前は物理的には弱い。何かあっては取り返しがつかない。」
淡々と語り若利は一瞬目をつむった。
「どうか少しは避ける事を覚えて欲しいものだ。」
「兄様。」
対する文緒の目はほんの少し潤んでいる。
「返事はどうした。」
「はい、兄様。」
お互い慈しむのは大変結構であるがせめて隣のテーブルで同じくらいの歳の連中が何やら見ている事くらいは気付いた方がいいと思われる。ねえあれ見て、えっあの人超格好いい、でも向かいの彼女じゃないとか、うそぉと好き勝手言われていると言うのに困ったものだ。