第12章 ・おでかけします その6

「兄様、どうかそのあたりにしてくださいな。」
「何か問題があったのか。」

脅しではなく素で疑問に思っているのが恐ろしい所だ。同じ事を思ったのか及川と岩泉も2人して若利を見つめそれから文緒に同情の目を向ける。

「嫁ちゃんも苦労するね。」
「学校でもロリータだのロリ嫁だのと言われるしもうどうしたら良いのか。」
「そこは全否定できねーのがあれだな。」
「岩泉さんまで何て事っ。」
「似たよーなもんだろが、まあそいつはともかくとしてもだ」

岩泉は待つのに飽きた子供のような顔つきになってきた相方の首根っこを掴みつつ若利に言った。

「その迷子札は外してやれ、チームの奴にまで今日は外せって言われてるとか相当だろが。」
「そうか。」
「そーそー、そんな可愛い格好には似合わないって。」
「クソ川喋んな、また話がややこしくなる。」
「どういった格好なら合う。」
「そっちも真面目に聞くな。」
「迷彩模様のワンピとか。」
「嫌です兄様。」
「そうか。」
「見られただけなのにウシワカちゃんの言いたい事理解してる子がいる。」
「この嫁がどっか行ったらどーすんだ。」
「そんな事はありえない。」
「てーした自信だ。っと、長話が過ぎたな。」

岩泉は呟いて及川を引きずりにかかる。

「行くぞ。」
「あ、ちょっと待って。」

また何だという顔をする岩泉を他所に及川は牛島兄妹に言った。

「2人ともこの後どーすんの。」
「とりあえず買い物には行きますが他は特に。」

文緒の答えに及川はふーんと呟いた。

「んじゃああっちには行かないのかあ、わかった。行こっか岩ちゃん」
「何なんだおめーは。」

呆れる岩泉をやはり流して及川はひらひらと片手を振った。

「バイバイ文緒ちゃん、ついでにウシワカちゃん。」
「はい、またお会いしましょう。」
「お前は会わなくていい。」
「そんなお顔をされずとも。」

実年齢がわかりづらい少女が自分よりずっとでかい野郎の背中をポムポムと叩いてなだめている様はかなり笑えるが笑ってはいけない。

「では失礼します。」
「じゃーねー。」
「まあ気をつけてな。」
「ああ。」

そうして義兄妹と幼馴染のコンビは別れたのだった。