第11章 ・おでかけします その5
「文緒と暮らすようになってこっち、少しはユーモアに対応した方がいいのかと考えた。だがなかなか難しいものだ。」
「そ、そーだね。」
「クソ川顔笑い過ぎだ。」
「岩ちゃんこそ。」
「文緒は多少理解してくれるのだが。」
「嫁の鏡がいた。」
そこへ文緒が買い物を済ませて戻ってきた。
「お待たせしました、兄様。」
「大して待っていない。」
若利はそれだけ呟くがさりげなく重たい図録の入った袋を文緒の手から取り上げる。
「兄様」
「お前では長く持つのは困難だろう。」
「ですが」
「遠慮する必要はない。」
「ありがとうございます。」
文緒は微笑み、兄妹のやり取りを凝視していた奴らに向き直る。
「あら、及川さんに岩泉さん。ご無沙汰しております。」
「おう、久しぶりだなウシワカ妹。いや嫁か。」
「もう、岩泉さんまでご勘弁くださいな。」
「文緒ちゃん久しぶりー、何か前よりも可愛くなってんじゃない。」
「及川さんは相変わらずお上手ですね。」
「信用されてねーぞ。」
「何でっ。」
「普段の振る舞いのせいだろう。」
「ウシワカちゃんには言われたかないね。」
控えめにだが言い合う野郎共に文緒はそれはともかくとしてと呟きこう続けた。
「そろそろ他の方のお邪魔になりますから一度外に出ませんか。」
もっともな話だった。
次章に続く