第10章 ・おでかけします その4
だがその頃背後では怪しい影が蠢(うごめ)いている。
「岩ちゃん、今の見た。」
「おう、一応見えた。」
建物の影から顔を出す野郎共2人、言うまでもないが一応言っておくと青葉城西の及川徹と岩泉一である。こいつらは別件で偶然この辺りにおりこれまた偶然牛島兄妹を見かけてそのまま人に紛れ背後についていた。しかし及川はともかくそのつもりが全くなかった岩泉にとっては災難である。
「ウシワカ野郎が文緒ちゃんと2人きりでデートしてるっ、ウシワカの癖に。」
「日本語喋れクソ川、意味わかんねーわ。」
「だってあのウシワカだよ、いっつも仏頂面でバレー以外は色々足りてなさそーなあのウシワカが嫁ちゃんとデートとかあり得なくない。」
「おめーの思考の方があり得ねーだろ。」
「文緒ちゃんもおめかししちゃって何か可愛いし、ううう腹立つー。よーしこのままついてってやる。」
「やるなら1人で行ってこいっておいテメ腕掴むな離せこのボゲェッ。」
岩泉は抗議するが余程暇なのか何なのか及川は止まらない。おかげで岩泉はそのつもりはない尾行に付き合わされる羽目になったのだった。
そんな事は知らない牛島兄妹は盛り上がってるつもりの会話を続け、博物館に到着していた。
次章に続く