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【ハイキュー】ウシワカイモウト第二部

第37章 ・義兄、遠征中の話 その3


一方更に時間が進んで夜中の事である。遠征中の若利は宿泊している部屋でスマホに着信がある事に気づく。ロックを解除して確認すると文芸部長からで写真が添付されていた。ビューアアプリで開くと早速愛する義妹がクレープを食している写真—それもご丁寧にフレームやスタンプで加工された—が表示される。今日は買い食いをしたのかと若利は思うが文芸部連中との付き合いもあるならとそこは考えない事にする。
しばらく写真を眺めていると同室の選手が何見てるんだと声をかけてきた。

「届いた写真を見ていた。」

若利が答えると相手は興味を示し何のと聞いてきたので若利は黙ってスマホの画面を見せる。

「妹だ。」

誰と聞かれて若利はまんま答えた。ああ噂のと言われたのでそれについても無言で肯定する。相手は可愛いなと言うが社交辞令で言われたそれを若利はそのまま受け止めた。

「やはりそう思うか。」

聞き返された相手が動揺した事は言うまでもない。

「愛らしいのはいいのだが反面少々困っている。」

気がつかない若利はそのまま話を進める。

「当人の自覚がどうにも薄い。人目を惹くから気をつけろと言い続けて改善されつつはあるがまだ胡乱な輩のリスクに対して心構えが足りていない。今回もこちらに来る前によく言って聞かせたのだがそれだけではどうにも不安でな、学校のチームメイトと妹が所属する文芸部の部長にも気をつけてやってほしいと頼んでおいた。」

あの東北のウシワカが長文でそれもまさかの妹語りをしている事に相手は驚いていた。後に彼が他に語ったところによるとこいつ今日の練習中どっかのタイミングでバレーボールが頭に当たったのかとすら思ったそうだ。

「その結果が今日の買い食いのようなのだが」

やはり全く気がつかない若利はふうとここで息を吐いた。

「文芸部の連中との付き合いもあるだろうから今回は大目に見ることにした。初めての事でもあるしな。」

相手は買い食い一つにも随分厳しいんだなと呟き、しかし若利は普通ではないのかと首を傾げる。突っ込みづらかったのか相手は一瞬沈黙し若利はお喋りが過ぎたかと解釈した。

「少し喋りすぎたか。」

呟いて若利は気を取り直す。喋った量ではなく内容に驚かれているとは露ほども思っていない。

「まさか妹を貰って出先でこういう話をする事になるとは思わなかった。」
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