第35章 ・義兄遠征中の話 その1
「逆にしばらくは気が楽なんでない、直接牛島さんの過保護食らわないから。それこそちっとくらい寄り道したって平気だろ。」
「それなんですが烏野方面には絶対行くなと強調されました。」
「何でわざわざ烏野なんだ。」
山形に聞かれて文緒は何も考えずに以前1人で烏野に赴き向こうのチームに弄られた話をした。
「おいおいっ。」
早速声を上げるのはやはり瀬見である。
「宿題手伝う話の前にお前そんな事になってたのかよ。」
「やるねえ、さりげに成長してたんだねえ。」
「成長なんだかただの向こう見ずなんだか。」
呆れたように息を吐くのは白布である。
「で、つまりその一件とこないだの夏休みの件と合わさって牛島さんがわざわざ烏野へ行くなって言い出す事態になったんだな。」
「そのようです。別に意地悪された訳でもないんですが。」
「そういう問題か、世間知らずの天然ボケが道もよくわかんないままに1人で真逆の方へウロウロすんな馬鹿。牛島さんの過保護以前の問題だ。」
瀬見から言われるならともかくまさかの白布に言われてキョトンとした文緒は思わず川西に視線を送ってしまった。川西は汲み取ったらしくボソリと呟く。
「賢二郎もデレたみたい。」
「太一うるさい。」
「てか」
山形が口を開く。
「烏野以前に青城の及川じゃねえの、警戒必要なの。」
「あの方は若干扱い辛い以外は大丈夫かと。大抵岩泉さんもいらっしゃいますし。」
「それを言ったらアレです、条善寺の方がヤバイですっ。」
「うん、文緒さんの対外関係はどうなってるのかな。」
しまいに大平が笑いながらも額に汗を浮かべた。
その文緒の義兄である若利はそんな事など露知らず、目的地に向かう道中バレーの事でほぼ頭がいっぱいでしかしほんの少し愛する義妹に何もないといいがと思っていた。
次章に続く