第32章 ・カレイの煮付け
その日は夏休み中の登校日でしかも牛島家ではまた母と祖母が1日不在だった。
そういった訳でご存知牛島文緒は今日の夕飯を作る事になったのだがそれについて悩んでいる。
「晩ごはんどうしようかなぁ。」
休み時間に文緒はうーんと考えていた。
「昨日はお肉だったからやっぱりお魚かな。でも何にしよう。」
「カレイの煮付け。」
「え。」
突然言われて文緒はキョトンとする。声がしたのは隣の席からでもちろんそこには義兄のチームメイトである五色工がいた。
「五色君、今の。」
尋ねる文緒に対し、五色は顔を真っ赤にして早口で言う。
「お、思いついたから言ってみただけだっ。やるかやんないかは好きにしろよっ。」
「カレイを煮付けにするのは初めてだけどやってみる。良かった、これでメインの献立決まった。」
「お、おう。感謝しろ感謝っ。」
「うん、ありがとう五色君。」
文緒は微笑み五色はやはり顔が赤いままだった。
その日の牛島家の夕食の時である。
「カレイの煮付けか。」
「はい、初めて作りましたから味付けをまだ掴みかねてますが。」
「お前が食うに耐えないものを出したことはない。」
「そうですか、良かったです。実は今日の献立に悩んでいたら五色君が助言してくれまして。」
「そうか。」
「いつもお世話になってばかりです。」
「そうだな。俺からも礼を言っておこう。」
「是非そうしてください、兄様。」
和(なご)やかな兄妹2人の時間だった。