第25章 ・海へ行く話 終わり
「愛に溢れた空間ですね。」
「もう止める気が失せた、川西あと頼むわ。」
「瀬見さん職務放棄ですか。てか俺には無理です。」
「余計な事は言う癖に。」
「賢二郎に言われると辛い。」
そうして一行は今度こそ帰路につく。
「文緒、拾った貝殻どーすんだ。」
電車の中で五色が言った。
「綺麗に洗って部屋に飾るつもり。」
「そーかっ。」
「んじゃ写真は後で固めて送るねん、若利君。」
「ああ頼む。」
「変な加工すんじゃねえぞ、天童。」
「セミセミうるさーい。」
「ぶっ飛ばす。」
「集合写真は俺が送るから。文緒さんはガラケーだよな、どうしようか。」
「俺に送ってくれさえればいい、大平。後はこっちで転送する。」
「オッケー。」
「あれ、文緒スマホみたいなの持ってなかったか。」
「んー。」
五色に聞かれるも文緒はまともに答えない。変だと思ったらしき五色はハッとしたように言う。
「牛島さん、文緒が寝ちゃいました。」
「そうか。」
隣に座っていた若利はもたれかかってきた文緒の肩をそっと抱く。いつもの無表情でやるものだからはたから見ればなかなかの図だ。
「疲れたんだろうな。」
前でつり革につかまっていた瀬見が言い若利はああと呟いた。
「初めての事に余程高揚したらしい。」
「天童と工には反撃してたしな。つかお前何ニヤニヤしてんだ。」
「していない。」
心外な事を言われ若利は反論するも瀬見はしてると主張する。
「思いくそ顔笑ってんじゃねーか。」
言う瀬見も笑っていて川西が愛だなぁとしみじみとし、面白がって文緒にちょっかいをかけようとする天童を大平がやめなさいと制止、山形がくそ何となく羨ましくなってきたと言い出して白布が阿呆らしいと呟く。
「ふにゃ。」
野郎共のザワザワが何となく耳に入ったのか文緒がうっすらと目を開けた。
「まだ眠っていていい。」
若利は呟く。義妹はふにゃと笑い再び目を閉じる。