第24章 ・海へ行く話　その5

「隼人、ムッツリ惚気(のろけ)野郎はほっとけ。あと川西、文緒は何も考えてねーから。」
「兄貴その2のフォロー力が凄い件。」
「天童も面白がりを程々にしなさいよ。」
「次文緒の足に触れるようなら天童、相手がお前でも考える。」
「おーこわ。」
「文緒、その焼きそばちょっとくれっ。」
「いいよ、はい。まだ口つけてないから。」
「むぐっ、うめえっ。じゃあこれやる。」
「ありがとう。これも美味しいね。」
「だろっ。」
「子供か。」

白布が冷ややかな視線を送る中義兄である若利は文緒が楽しんでいると満足していた。

若利が気にかけていた事が実際に発生もした。

「あっ、文緒が野郎に声かけられてますっ。」
「行ってくる。」
「若利君のオーラがヤバイんだけど。」
「相手を討伐するつもりですかね。」
「賢二郎、それ冗談に聞こえない。」
「牛島さん相手の奴と話してますよっ。」
「大丈夫かな。」
「獅音心配すんな、相手が若利にビビるのが早いだろ。」
「冷静だな、瀬見。」
「いや待てお前らむしろ相手がドン引きしてる感じだぞ、若利の奴また大ボケかましたんじゃね。」
「文緒さんが牛島さんペチペチしてますね。」
「あー、隼人のが当たってんなさては。」

チームの野郎共が好き勝手言っている間に若利は文緒の手を引いて戻ってくる。

「おかえりー、若利君。」
「すまん、待たせた。」
「一体何があったんだよ。」

顔を赤くしてそっぽを向いている文緒をちらりと見ながら瀬見が尋ねると若利はさらりと抜かした。

「胡乱な奴が文緒に声をかけていたから間に入っただけだが。」
「いや見てたけどお前文緒にひっぱたかれてたじゃん。どんな大ボケかましたんだ。」
「事実を言ったまでだ。」

やはり淡々と言う若利にとうとう文緒が兄様、と口を開く。

「わざわざ知らない人の前でまだ嫁じゃないと言うのはどうかと思います。」

途端にワナワナ震えていた瀬見が声を上げた。

「こんっのど天然っ、毎度毎度何でもかんでも言やいいってもんじゃねーっつのっ。」
「よくわからない。」
「いい加減何とからならないかなぁ、この流れ。」
「文緒っ、こればっかは牛島さんどーにもなんないぞっ。」
「五色君にまで言われるなんて何て事。」