第21章 ・海へ行く話 その2
「最初は嫌いだったなら今はどうなんでしょう。」
「ちっ、やっぱビビりの癖にストレートか。」
舌打ちしながらも白布はそうだなと続ける。
「牛島さんの話と瀬見さん、工の話、あと自分でも見た限りでは悪くはないって感じ。何でもかんでもはいはい言ってんじゃないのがわかったし牛島さんに人前で膝に乗っけられたのは本気で同情した。」
「その話はご勘弁くださいな。」
「そうだ、お前ちっと前に廊下でロリ呼ばわりしてきた奴と喧嘩してたろ。」
「喧嘩だなんてそんな。」
「あんだけ叫んでてよく言うよな。」
ちなみにその時はおいロリ嫁、ロリータじゃない、じゃあ幼女、違うってばといった不毛なやりとりが交わされていたのだがまさか白布に見られているとは思わなかった。
「俺最後までいなかったけどあれ結局どうなったんだよ。」
「キリがないのでスマホのゲームで決着しました。」
「は、お前ガラケーだろ。」
「その人の端末で勝ち抜き戦をやったんです。交代でプレイして何人抜けるか勝負しました。向こうが負けたらロリータとか嫁呼ばわりはやめるって条件で。」
「結果は。」
言いながら白布は顔がヒクヒクしているが文緒は珍しいとしか思わない。
「6人抜き対5人抜きで私の勝ちです。危ないところでした。」
すまして言う文緒を白布はじっと見ている。
「いかがされました。」
「やっぱりお前とコンピュータゲームやりたかない。」
「心外です。」
文緒は呟いた。
「白布さんの方がお強いのに。」
「前そっちの家でやったゲームの時思ったけどお前しつこいんだよ。」
「すぐ諦めるのは良くないと兄様も言ってました。」
「突っ込み役がいない兄妹は面倒だな。」
まったくと呟く白布だが文緒はその声が穏やかである事に気づく。
「まあ牛島さんが幸せそうだからいい。」
「ありがとうございます。」
微笑む文緒に白布はふんと言い前を向いた。
「どうもお迎えみたいだな。」
言われて見るといつの間にやら義兄の若利が海から上がってこちらに来ていた。
次章に続く