第3章 ・心配性
最愛の義妹はさっきの奴におい牛島ロリ、呼ばれてんぞと言われていたのだ。呼んだ当人はちゃっかり逃げていたのだが。
「ロリ嫁から派生して最近はもう収拾のつかないことに。」
「他にもあるのか。」
「文芸部のみんなは事あるごとに幼妻と言うし、奥方などと言い出す人もいるし。」
「何故そうなる。」
そもそもは兄様の過保護丸出しからですと言いたい所を文緒が我慢していたのを若利は知らない。若利が解せぬ一方困った顔をしていた文緒だがすぐにところでと切り替わった。
「兄様、いかがなされました。」
若利はああ、と呟く。
「大事はないかと見に来た。」
「え。」
「昼休みに来た時咳をしていただろう。」
言う若利に文緒はああと笑った。
「ご心配には及びません、兄様。一時(いっとき)のことです。」
「そうか。」
「兄様はすっかり心配性になられましたね。」
「お前については何かと気になる。」
「何て事、兄様にそんな気をつかわせるとは。」
「気にする必要はない。俺の務めだ。」
「真面目な辺りが兄様らしいです。」
「そうか。」
若利の威圧的な見た目とは裏腹に穏やかなやり取りであるのは結構だがこの兄妹は無意識に2人だけの空間を作ってしまい、困った1-4の奴らが自分達を見ている事に気がつかない。若利よりは少しマシとは言え結局妹も天然だとこうなるのか。
「それとわからない事がある。」
「何でしょう。」
「五色を呼ぶのに何故お前がきた。」
「男子が五色君が遅いと話している所に多分食堂じゃないかと言ったら丁度いいからお前が行けと言われました。おかげで私が危ない所でした。」
「軽くて薄い娘を走らせるのはどうなのだ。」
「兄様、前にも申しましたが私は衣類や寝具ではありません。薄焼きのおかきでもないから。」
最後の一文は何事だと若利は思ったが程なく文緒の後ろあたりでついボソッと口にしてしまった1-4の奴に向けられたものである事を悟った。他人にまで突っ込むとは成長したものだと若利は感心せんでも良いところで感心する。
「いずれにせよこちらに来てから結構体調がいいんです。どうか気を揉まないでくださいな。」
「そうか。だが妙な我慢は許さん。念押ししておく。」
「はい、兄様。」