第20章 グレイ scene2
そんな可愛いことをいう智を、放っておけるはずはなく。
その晩は次の日も撮影だというのに、深夜まで智を抱き潰した。
いや…凄かったのなんの…
次の日、黒狐と潤(偶然同じ名前でなんか照れる)が初めて出会うシーンの撮影。
二人共顔が疲れてるとマッサージされて、なんか恐縮した。
この日は現場にアホの子は来てなかったから、智の機嫌が悪くなることはなくて良かった。
昨日は同じスタジオに居たけど、それぞれ違うシーンを撮っていたので、今日初めてセットで智と一緒になった。
桜の木の上に居る智を見てドキッとした。
全身が黒い。
長い黒髪のかつらをつけていて、そこからは黒い耳が生えてる。
漢の様式だというその着物は、日本の着物よりも動きやすそうな細身で裾が広がっている。
そしてハイウエストな位置に帯。
更にその上に肩がけのコート。
コレがまた袖と裾がヒラヒラしてかっこいい。
真っ黒な智がものすごく新鮮で。
桜の枝の上で遠くを眺める智に、見惚れてしまった。
「ま、松本さんっ…」
マネージャーの焦る声が遠くから聞こえて我に返った。
いかん…バレる…
そんなこんなでその日の撮影は無事に終了した。