第20章 グレイ scene2
車は、どんどん雅紀の家に近づいてる。
俺たちはあれから無言になってしまって。
気まずい雰囲気が車内に流れてた。
雅紀のマンションが見えてきた。
「雅紀?もう着くよ」
返事がないから助手席をみたら、雅紀は眠っていた。
マンションの前で車を停めて、雅紀を揺り起こした。
「雅紀…?着いたから起きて?」
雅紀はふっと目を開けて、俺を見上げた。
焦点の合わない目が俺を捉えると、ふわっと笑った。
「潤…」
心臓がおかしくなるかと思った。
そのまま雅紀は俺に凭れてきた。
「ありがと…助かった…」
「雅紀…」
「ごめんね、回り道させちゃって…」
ぎゅっと俺の腕を掴むと、また潤んだ目で俺を見上げた。
「おやすみ…」
そのまま雅紀はドアを開け降りていった。
地面に足をついた瞬間、雅紀は崩れ落ちていった。
「雅紀!」
慌てて車を飛び出して、腕を掴んだ。
ぐいっと引っ張りあげて、もう一度車の助手席に乗せた。
「え…?潤…」
「いいから。今日は俺んち泊まって。心配で帰れないから」
固辞する雅紀に無理やりシートベルトをつけて、家に連れ帰った。
まるで誘拐だけど、こうでもしないと安心して眠れない気がしたから。