第20章 グレイ scene2
車を走らせると、雅紀が苦しそうに溜息をついた。
「大丈夫?座席倒しなよ」
「ん…」
暫くもぞもぞしていたけど、座席が倒れない。
諦めてまた座席に沈み込んだ。
「倒れない?」
「ん…やり方おかしいのかな…」
そう言って力なく笑う。
信号で止まったから、雅紀の身体越しに手を伸ばした。
ガタっと勢い良く座席は倒れた。
「わっ…」
背もたれに手を着いていたから、雅紀の身体の上に倒れこんでしまった。
「痛っ…」
「あ、ごめ…」
雅紀が腕を掴んでくれる。
「大丈夫…?」
ドキっとした。
少し頬を染めて、潤んだ目で俺を見上げていた。
唇が…ふんわりと赤い。
まつげが長い。
息が掛かりそうな位、近づいていた。
「う、うん。大丈夫…」
そっと身体を起こすと、気を落ち着けるようにハンドルを握った。
「貧血じゃなくて…熱あるんじゃない?」
「え?そう…?」
「だって、顔が赤いよ?」
「それは潤が抱きつくから…」
「えっ…抱きついてなんか…」
「あ、違くて…」
雅紀を見たら、真っ赤になって顔を隠していた。
え…?
なんなのその反応…
「なんでも…ない…忘れて…?」