第20章 グレイ scene2
「おつかれー」
レギュラーの収録が終わって、それぞれ楽屋を出て行く。
俺は電話が入ったりして、準備が遅くなって、結局一番最後に楽屋を出た。
「じゃ、おつかれ」
チーフマネに挨拶してエレベーターに乗り込む。
今日は自分の車で来たから、地下まで一人だ。
エレベーターを降りて、駐車場まで歩く。
カツカツと自分のブーツの音が、駐車場内に響く。
他の車のエンジン音が場内に響いている。
自分の車の鍵を開けて、車と車の隙間に入ろうとしたら、運転席の扉の前で誰か蹲っていた。
「…大丈夫ですか?」
声を掛けたら、その人は顔を上げた。
「雅紀…どうしたんだよ!」
「あ…潤、ごめ…ちょっと、めまいして…」
よく見たら隣の車は雅紀の車だった。
「大丈夫か?」
「うん…暫く休めば大丈夫だと思うから…気にしないで…?」
「そんなこと言ったって…」
横に座って、暫く待ってみたけど顔色は悪いままで。
「今日、送るから乗りなよ」
「え…でも…」
「明日オフだし、車要るならここまで送るから」
そう説得して、雅紀を助手席に乗せた。
「ごめん…迷惑掛けて…」
「全然…雅紀んち、俺んちから近いじゃん…」
そう言って笑ったら、雅紀もうっすらと笑みを返した。