第20章 グレイ scene2
「あー…疲れたぁ…」
収録が終わって、家に帰り着いた。
あの後雅紀は、変に緊張してしまって、身体にずっと力が入っていた。
あの本物さんは、あの場所に立っているのが楽しいらしく、動くことはなかったと智くんは言っていた。
ソファに雅紀が身体を沈めている間に、素早く風呂にお湯を落とす。
「雅紀、風呂とりあえず入れよな」
「…翔ちゃんも一緒に入ろうよ…」
「えっ…」
「だめ…?」
上目遣いで見上げられて、断れるわけがなかった。
「…わかった」
本当は取材メモをちょっとまとめたかったけど、雅紀がこうなっているからには仕方ない。
取材メモはまた明日やればいい。
…だって一緒に風呂入ったら絶対…
流れ的には…もう、今日オワタだから…
股間がむくむくしてしまったのを必死で隠しながら、風呂の準備をした。
俺、こんなスケベだったかなぁ…
おっかしいなぁ…
雅紀はソファの上で、膝を抱えて座ってる。
元気なく、シュンとしている。
こいつはいつも、そうだ。
俺に迷惑を掛けたって思ってるんだ…
全然そんなことないのに。
ソファの後ろから、雅紀を抱きしめる。
「雅紀…?また落ち込んでるの?
「落ち込んでないもん…」
「じゃあなんでこんなに元気ないんだよ?」
「別に…」
口を尖らせて、ぷいっと横を向いてしまった。