第20章 グレイ scene2
車はいつの間にか、工場地帯を走っていた。
「ここ、どこ?」
さっきまではどこに居るのかわかってたんだけど、暫くうつらうつらしてしまって、どこに居るんだか分からなくなってしまった。
「川崎だよ」
暫く走って、道路に路駐した。
帽子を被ってメガネをして、ちょっとだけ変装して車を降りた。
先を歩く翔ちゃんについていく。
「翔ちゃん、どこいくの?」
「まあまあ…」
暗い道を翔ちゃんはすいすい歩いて行く。
暫く行くと、川みたいなところに出た。
「智くん、ほら、あれ見て」
翔ちゃんの指した方向。
見てみたら、川沿いに巨大な工場の塊が見えた。
「わあ…スゲ…」
その工場は暗闇に突如現れた、不夜城。
煌々と無機質に光を放ち、まるで近未来の都市のようだった。
「凄いねえ…これ、収録で映像みたけど、初めて生で見た…」
「凄いでしょ。智くんと見たかったんだ…」
「翔ちゃん…ありがと…」
周りに人が居ないのを確認して、そっと翔ちゃんの手を握った。
翔ちゃんはちょっとびっくりした顔をしたけど、すぐに俺の手をぎゅっと握ってくれた。
そのままいつまでも二人で、工場を眺めていた。