第20章 グレイ scene2
「ねえ、翔ちゃんどこいくの?」
「んー?ナイショだよ」
翔ちゃんはそう言って、上機嫌でハンドルを握ってる。
今日はどこに行くのか、全然教えてくれない。
車は首都高を走っている。
夜景が凄い勢いで後ろに流れていく。
「あ…痛車…」
車にこれでもかとアニメのキャラがペイントされている車が何台もパーキングに停まっているのが見えた。
「智くん、車に興味あったっけ?イタリアの車好きなの?」
「違うよ…痛い車…」
「あ、そっち?」
そんな他愛もない会話をしながら、車はどんどん進んでいく。
そっと翔ちゃんの横顔を盗み見る。
外からの光が、翔ちゃんの顔を滑っていく。
暗闇でもわかるくらい、綺麗だ。
白い頬に、真っ赤な唇。
くりくりの目は、きらきら光ってる。
「奥さん…」
「えっ」
「俺の奥さん」
「な、なあに?智くん、急に…」
「なんでもないよ」
今度はじっと見つめた。
みるみる頬が赤く染まった。
「じっと見ないでよ…」
「なんで?」
「だって…見つめ返せない…」
死ぬかと思った。
可愛すぎる。