第19章 不言色(いわぬいろ)
「ねえ…翔さん、お願いだから。何があったか聞かせて?」
オフの日、翔さんの家に押しかけた。
翔さんは俺のこと家に入れてくれたけど、絶対触れようとしなかった。
「雅紀になにされてるの?」
「別に…」
ソファに座ったまま、翔さんは俺を見ようとしない。
「翔さんっ…」
「和也…」
弱々しく俺を呼ぶ声がした。
肩が震えてる。
「どうしたの…翔さん…」
「なんでもない…」
「顔見せて…?」
俯いていた顔を上げると、翔さんは泣いていた。
涙で頬が濡れていた。
「翔さん…ねえ、何があったの?お願い…なんで雅紀と会ってるの?」
「和也…俺…」
翔さんは目を閉じた。
「お前のためだったら、なんだってするから…だから…待ってて…?」
「え…?どういうこと…?」
「愛してる…」
翔さんの腕が俺を包んだ。
ぎゅっと抱きしめて、俺のこと離さない。
「翔さんっ…」
翔さんに抱きついて押し倒した。
だけど、翔さんはそれ以上なにもしてくれなくて。
ただ涙を流すばかりだった。
あんなに愛してくれたのに。
でも、わかる。
翔さんは俺のこと愛してる。
じゃあ何で…