第19章 不言色(いわぬいろ)
腕時計のアラームが鳴る。
もうそんな時間か…
誰も居なくなった楽屋。
ソファで居眠りしていた俺は、例の如く、最後になった。
時間は0時。
身体に掛かったブランケットを剥いだ時、楽屋に入ってくる人が居た。
「誰…?」
無理やり目覚めたから、まだよく見えない。
半分電気を消してある薄暗い室内で、その人の影はぼんやりとしか見えなかった。
突然目の前が真っ暗になったかと思ったら、口を塞がれた。
とっさに身を捩ったけど、凄い力で押さえこまれていきなり腹を殴られた。
強烈な痛みに、だんだんと意識が遠のいていく。
手を伸ばして殴った手を握る。
ぎりっと爪を立てると、うめき声が聞こえた。
「ま、さ…き…」
目が覚めたら、見たことのない部屋に居た。
手首を縛られていて動けない。
エアコンの効いた、冷たい床に投げ出されていた。
部屋を見回すと、壁に凭れて雅紀が座っていた。
「…どういうつもりだよ…」
雅紀はゆっくりとこちらを見た。
「それはこっちのセリフじゃね?」
ゆっくりと立ちあがって俺を見下ろした。
「アンタが何してるか、俺知ってるから」