第19章 不言色(いわぬいろ)
気づくのが遅すぎた。
いや…今はもう気づいた。
それにニノの心は、俺に向いている。
だから、待つしかない。
ニノを信じて…
それから、俺達は相変わらず隙を見ては密会する日々だった。
何ヶ月もそんな状態が続いて、そろそろアルバムのレコーディングが始まろうかという時期になっていた。
雅紀と俺は、つかず離れず。
適度な距離を保ちながら、なんとか過ごしているという状態だった。
雅紀が俺と和也のことを知っているのかはわからない。
和也から、雅紀のことを聞くこともなかった。
聞いたら、嫉妬で和也を壊してしまいそうだったから。
薄々、雅紀はなにかを勘付いては居るだろう。
だが、あれから俺たちは完璧に密会をし続けた。
証拠は出さない、残さない。
もしも誰かに聞かれたとしても、ミーティングとして処理できるように体裁は整えていた。
だから雅紀は確証が持てないのだろう。
そんな簡単に壊されてたまるか。
俺は…
この頃になるともう確信を持っていた。
和也のためなら死ねると。
そして、和也も死んでくれると。
だから、和也と一緒にいるためならなんでもする。
たとえ、それが人を殺すことだって。
俺は厭わないだろう。