第19章 不言色(いわぬいろ)
局の廊下を歩きながら、ニノが言ったことを思い出していた。
”雅紀とは別れることはできない”
ニノが昔、俺に告白をしてくれた時…
俺はそういうのじゃないと思って、流したんだ。
ニノから聞かされて、始めて俺はそこまで思い出した。
失恋したと感じたニノは、それを慰めてくれた雅紀とずっと付き合ってる。
今では両親に紹介までして、家族同様の付き合いにまでなっている。
そんな中、俺とニノは…
雅紀にしてみれば、今更なんだと思っているんだろう。
ニノは雅紀と今は別れることはできないと言っている。
時間が欲しい。
ニノはそう言った。
だけど…
もう俺のほうが我慢できないかもしれない。
ニノを独占したくて堪らない。
あの身体を、あの瞳を…
雅紀が好きにしているのかと思うと、許せない。
ニノの想いが、少しでも雅紀に向いているのが許せない。
ふと自嘲する。
俺はこんなに嫉妬の塊だったろうか。
今まで付き合った相手に、ここまでの執着をすることがあっただろうか。
いや…ないな…
なんでニノなんだろう…
なんであの時、気づかなかったんだろう…
こんなに愛しているのに。