第19章 不言色(いわぬいろ)
この前、珍しく掃除しておいてよかった。
ニノを招き入れると、鍵を閉めてリビングの暖房を点けた。
「ま…適当に座ってよ…」
台所に行って、なにかないかと探すけど、酒くらいしかなくて。
しょうがないからチューハイの缶を持って行った。
「ごめん。これくらいしかなくて…」
あんまりアルコールに強くないから、これくらいでいいかと思ったけど、もっと強い酒が飲みたいと言われた。
ウイスキーを出すと、いきなりワンフィンガー飲み干した。
「ちょ、待て。割ろう。なんか…ロックとか」
慌てて止めたけど、もう二杯目を飲み干していた。
「なあ…言ってくれよ。雅紀と付き合ってんだろ?隠されると、こっちも対処の仕様がないんだよ…」
またニノは飲もうとして、手を伸ばす。
「ニノっ…いい加減にしろよ!ちゃんと言ってくれって!」
「翔さんっ…」
またニノは綺麗な涙を零した。
俺に手を伸ばすと、首に触れた。
両手を俺の首に巻きつけると、激しく涙を零した。
「……たい……」
「え…?」
「翔さん…殺したい…」
瞬間、ニノの手に力が入った。
ぐうっと喉の空気が口から出て行く。
目の前に火花が散った。
白い。
苦しくて口を開ける。
ニノの手を握って外そうとするけど、ものすごい力で外れなかった。