第19章 不言色(いわぬいろ)
「ねえ、ニノ」
「んー?」
「この前の借り、返さない?」
「ええ?今日?」
めちゃくちゃ不満そうな顔をしてこちらを振り返るのを、笑いをこらえて見つめる。
俺の顔を見たニノは、ふっと笑うとこくっと頷いた。
「いいよ。待ってて」
収録終わり、俺はもう準備ができていた。
楽屋のソファに座りながら待っていると、すぐに準備をして寄ってきた。
「もう行けるよ」
そう言って俺の腕をとった。
立ち上がらせると、にこっと笑って先に歩き出した。
「今日俺は、どうしたらいいですか?」
可愛い顔をして、俺の事を覗き込んでくる。
知ってるんだぞ。
その表情が可愛いってわかってるってこと。
わざとしてんだろ?その顔。
「そんな顔すんなよ」
「え?」
「俺の前で営業しなくていいから」
そう言うとニノは不思議そうな顔をしていた。
自覚してないのか?
「営業用の顔になってたぞ?」
「え?そう…?そんなつもりなかったけど…」
顎をさする姿は、本当にびっくりしているようで。
「だって、すげえかわいい顔して笑ってたぞ?」
そう言ったら、真っ赤になって。
耳まで赤くして。