第19章 不言色(いわぬいろ)
その日は終始元気のないニノを励ますように色々話して、深夜まで過ごした。
夜半になって、やっとニノは元気を取り戻した。
けど、やっぱりなんで泣いていたのか俺に話すことはなかった。
帰り際、ニノが玄関で照れくさそうに俺に礼を言った。
「いいよ…じゃあ今度なんかしてもらおうかな…」
「え?まじで?奴隷?」
「ふ…バーカ。じゃあな、おやすみ」
「うん…ありがとう。翔さん…」
かわいらしく首を傾げてニノは微笑んだ。
帰りの車中、ずっと頬が熱かった。
その夜、夢を見た。
若い…若いころの夢…
皆まだ痩せてる。
身体が細くて、華奢だ。
あれはどこだっだろう。
野外のイベントで、バックステージで皆で水を掛けあって遊んでいた…
若かったなあ…
なんて、みんなといっしょに水を掛けながら、年を取った俺は思っていた。
水が乾いた土に染み渡って、踏みつけた草と土の匂いが濃く周りにたちこめている。
冷たい水が頬をかすめていく、その温度まで思い出した。
あれはどこだったろう。
はっきりと思い出せない。
ぼんやりと回りの風景が見える。
皆の笑い声が響いている。