第19章 不言色(いわぬいろ)
その日は、ニノと俺の距離が近い気がした。
繋いだ手を離さなかったからだろうか。
収録が終わって楽屋に戻る途中、ニノと雅紀の姿が見えなくなった。
楽屋に戻ってしばらくしても帰ってこない。
チーフマネが次の仕事の話をしてる最中に戻ってきた。
二人には笑顔はなかった。
いつもならこんな時、おちゃらけてはいってくるのに。
ミーティングが終わって、それぞれ着替えをして帰る段階になっても二人は表情が硬い。
気になってニノに歩み寄った。
「ニノ?」
声を掛けると驚いたような顔で振り返った。
「どうした?なんかあった?」
そう声を掛けたら、みるみる目に涙が溜まった。
「えっ…ちょっと…」
その時、雅紀が乱暴な音を立てて楽屋のドアから出て行った。
「なんだあれ…」
智くんも潤も呆然とドアを見ている。
ニノを振り返ると、瞳から綺麗な涙が零れ落ちた。
透き通るような、水晶みたいだった。
俺はニノにキャップを被せると、二人に見えないようにニノの頭を抱えた。
「今日、俺、ニノ送ってくわ…」
二人は頷いて俺たちを見送った。